2004.Summer

●終わらない刻の狭間で――プリンシュパリティの軌跡
・岩見沢市最終防衛ライン――函館テンプルム来襲
 雪花を奪還した魔に属する者達は、自衛隊、ユディット率いるエグリゴリ=旭川テンプルム離反部隊と共に、かねてから情報が告げられていた函館テンプルムの侵攻に、防衛ラインを岩見沢市に築いた。
 神、魔、そして人が入り乱れての激戦が繰り広げられ、両軍は一歩も引かぬ攻防を繰り返す。
「軸線あわせ! 照準! 撃てぇ!」
 戦場の要は自衛隊の戦車による一斉砲撃だった。射程距離に捉えられた函館テンプルムは、魔の力を付与された砲弾に外殻を抉られてゆく。
 ――砲弾が尽きるのが早いか‥‥テンプルムが音を上げるのが早いか‥‥。
 そんな中、激しい攻撃に晒された函館テンプルムは、撤退する所か速度をあげたのだ。
 ――特攻!?
 函館テンプルムの標的は自衛隊部隊だったのである。敵の意図に気付いた魔皇が自衛隊に退避を指示するが、防衛ラインに覚悟を決めた部隊は、容易に退路を見つけられない。運良く戦車を捨てて生身で駆け出す者もいたが、群がるサーバントの餌食と化した。もはや誰も止める事ができない。
 その日、函館テンプルムは地上へと落下したのである。
 だが、未だ神帝軍には札幌テンプルムが残っているのだ。作戦は成功したが、より打撃を受けたのは魔に属する者達と言えるだろう。
 ――次は――札幌が来る!!
 現状、札幌領域に絶対不可侵の壁を築いて沈黙を保っている13使徒の一人――フィリポ。
 戦いは最終局面へと向かおうとしていた――――

●邂逅の黒騎士――堕つ
 拘りを捨てきれず、再び戦場へと舞い戻った仮面の男は、ドミニオンを駆ってマティアの元から出撃して行った。
 ――全ての決着をつける為に‥‥。全ての想いを昇華する為に‥‥。
 標的は――レギオン!!
「出て来い、魔皇ども。そこにいるのは、判っている。決着をつけようではないか」
 激戦により傷ついたレギオンへと迫るドミニオン。
 魔に属する者達は最後の切り札――アクスディアで迎え撃つ!
 ――多対一‥‥そんな中でも仮面の黒騎士は口元に笑みを浮かべていた。
「ほぅ。アクスを引っ張り出して来たか。我が相手には、相応しいッ!!」
 その戦いは、神帝軍と魔に属する者という枠を越えていた。プライドを捨て切れぬ男のエゴ、それに応える魔皇達‥‥。
 目まぐるしく神機と殲騎が飛び交い、得物が交差する戦いの行方は、接近戦で下された。
 弾け跳ぶコクピットの装甲‥‥。宿敵を目掛けて飛び込む魔皇!
「大ヤコブ! 貴様ぁぁぁぁ!!」
 ぶつけられる想いと想い。応える好敵手の剣と剣。死なせるつもりはなかった‥‥。
「魔皇に屍をさらすなど、死んでもごめんだ!!」
 ドミニオンは水飛沫を盛大に吹き上げると共に、海中へと沈んで行った。
 最後に窺えた大ヤコブの表情は、満たされた笑みを浮かべていたという――――

●愛皇アンデレ――お茶会と結界と
 京都エリアを囲む結界。それは魔に属する者の能力を制止するものだった。しかし、京都を取り纏めるアンデレは、魔に属する者達を根絶やしにするつもりで造った結界では無いと言う。
 ――感情摂取を最小限に食い止めるルチル。
 ――再び悪魔化を阻止する為に‥‥魔に属する者の暴動を抑える為の結界‥‥。
 京都テンプルムにお茶会という会談で招かれた魔に属する者達は答えを導き出す。
 ――ダークフォースは、生きる為に必ずしも必要なものではない。
 ――魔皇としての力を抑え、人と同じとなるは望む事。謹んで戒めを受け入れます。
 魔の力を抑える事で、神と魔と人の垣根が無くなっていくのなら――――
 しかし、それを取り締まるのは神帝軍であり、テンプルムは健在だと危惧する声もあった。アンデレは微笑みを浮かべて口を開く。
「人は異質な存在に敏感です。人にとって、我々も貴方達も同じかもしれない。けれど、ルチルが形成する結界は、人との間にある垣根を低くしてくれる」
 理想の地――それがアンデレの望むもの。
 ――剣には剣を、微笑みには微笑みを、そして握手には握手を‥‥。
『これ以降、京都は神帝軍と魔皇、そして人が自由に行き来出来るエリアを目指します』
 魔皇をテンプルムへと招いた翌日、京都メガテンプルムのプリンシパリティ=アンデレの名が記された書状が、賛同した魔皇の署名と共に、各テンプルムと隠れ家へと届けられたのである――――

●夜明け――剣皇シモンへ導き出した答え
 神戸にて、プリンシパリティ=シモンとヨハネ、瑠璃の司・つばさによる会談が行われて一ヶ月もしない内、魔に属する者達を殲滅する為に、神戸テンプルムは暴動を起こした。
 標的は隠れ家――瑠璃。
 だが、紫の夜であった為、大事に至らず魔に属する者殲滅派は鎮圧された。問題は彼等の処分。それをシモンは己の身も含めて魔皇達に委ねたのである。
 魔に属する者達の答えは決まっていた。
 ――処遇は神帝軍に任せると‥‥。
 それは魔に属する者達にも同じ事だと伝えようとしていたのかもしれない。
 先の会談で明確に導き出せなかった答えがシモンへと告げられる。
 ――停戦協定に従わない者の処置をどうするか?
『停戦・和平に向け魔の者との共同部隊を設立。会談を行うなどの具体的な行動が見られる神帝軍に対して、行動を起こした場合の拒否・妨害はする。その上で、捕らえた者は今回のように相手側に処分を検討してもらう』
 これが答えだった。
 こうして、神戸を中心としたエリアでは、神魔相互不可侵を元に情報収集以外の魔の活動は厳禁。その出入りも厳しく制限される事となる。いずれ魔の出入り自由も許す考えをシモンは見せたが、その提案が受け入れられるには、時間を必要とするだろう――――

●ヨハネ――魔を計る少年
 大阪メガテンプルム筆頭・ヨハネの行動はシモンほど明確では無かった。常に周囲の駒を動かす如く立ち回り、賢皇の名に相応しい展開を見せる。どこか悪戯っぽくて、どこか子供っぽい‥‥それが彼だった。
 そう。神戸にて会談に参加したヨハネは、常に魔に属する者を試していたのかもしれない。なかなか真意が掴めない動きに魔に属する者は混乱した。
 時に信じ。時に疑い。挙句は魔皇同士で意見の食い違いから牙を向け合う事もあった。
 全ては少年の謀だったのかもしれない。魔に属する者を試す為の謀‥‥。
 幼い掌の上で、天秤は揺れる。
 右へ、左へ――。
 天使と魔皇、ヒトと魔皇。
 ‥‥果たして、並び立つことはできるのか。
「分かった。その件、ヨハネにも告げておこう」
 神戸の一件はシモンよりヨハネに告げられた。
 秤は、揺れる。
 静かに見つめる幼い視線の先で。
 ひとつ、またひとつ。積み上げられてゆく負荷に、頼りなく‥‥。
 薄氷を踏むように脆ういバランスの上に成り立つ束の間の平和。
 彼等は何処へ行くのか、
 ――そして、何を成すのか‥‥。
 未来への道は、尚、混沌と。白く塗りつぶされた闇の彼方にあった――――。

●タダイ――混沌の中で貫き通した雷
 ――神の望む平和は、苦も何もなき平らかなる世‥‥貴様らノイズは全て、消してやる!
 各地で和平や中立、停戦協定が結ばれる中、名古屋の男だけは元来の意思を貫き通していた。
 烈皇――タダイ。穏健派が多いプリンシパリティの中で、この男だけは違っていた。
 和平を望む神帝軍ですら毒牙に掛け、従わぬ者には各地を周って制裁を叩き込んでゆく。
 ――紫の夜。
 タダイは異形のネフィリム、アザゼル=アシュタロスを駆り、標的を蒼嵐へと捉えて侵攻を開始した。
 迎え撃つは各地から終結したアクスディアの力。
「今、共存の道を進もうとしている。必要無いんだよ、これからの世界には、お前も俺もな!」
 激しい戦闘に多くの仲間が散って行く中、或る殲騎の捨て身の行動が烈皇を捉えた。
 倒さねばならない! 何としても奴は倒さねば!
 光条が二機を貫く。刹那、疾駆する殲騎が異形のネフィリムに巨大な剣を叩き込んだ。
 タダイは鮮血を流しながら口を開く。
「所詮貴様らはノイズだ。神でもなく、人でもなく、永遠の存在でもない。どうあがこうが、貴様らは感情に振り回され、何も出来ずに滅びるだけだ‥‥。貴様らが何も出来ずにもがき苦しむ様を、人に追われ、神に罰せられる様を‥‥あの世から、笑って見せてもらうぜ‥‥?」
 まるで、それが終わりだと告げるように、戦場に権天使の笑いがいつまでも響いていた。
 ――こうして紫の夜は一つの終わりを迎えた。
 名古屋メガテンプルムは権天使・烈皇タダイを失い、名古屋へと撤退する。
 だが、その戦力は半減しただけであり、タダイの参謀であった大天使は表向き協調路線を表明していたが、各地への武闘派に秘密裏に呼びかけ、烈皇の意志を継ごうとしていることは明白だった。
 混迷と混沌は世界を包み、未だ晴れようとはしていなかった――――

●ペトロの痕――南の大地の行方
 九州・四国の神帝軍を管理していた巌皇ペトロ。彼が翡翠の地へ侵攻して絶命したのは記憶に残っている者もいるであろう。
 そんな中、戦いに先駆け、翡翠と長崎の神帝軍勢力との間で結ばれた停戦協定。魔皇側の提示した条件は4つ。
『感情搾取の事実・詳細を、神帝軍側から公式に人間側へ公開する事』
『その上で人間側からの代表者を交え、三者による和平会談を行う』
『更に感情収拾を停止する技術の早期確立の為の合同機関・ミチザネ機関、並びに当面の九州の治安を守る和平維持機構の発足』
『大宰府に眠る菅原公に因んだミチザネ機関は、翡翠の森で見つかった新たなエネルギーの解明にも当たり、和平維持機構は神魔人の交渉の場を定期的に用意する』
 長崎神帝軍はそれと引き換えに他の穏健派へ働き掛け停戦の枠組みを提供する。ここに和平への道が開き始めたのであった。
 代表者不在の神帝軍に対して突き付けられた条件。
 停戦協定に快く思わない神帝軍の部隊を、魔に属する者は次々と狩って行った。
 戦禍は余りにも爪跡深く、焦土と貸した翡翠の森の復興も絶望的に見えた。
 ――そこに、再生の兆しを思わせる新たな可能性が芽生えたのである。
 廃墟と化した緑城跡に刺さった一振りの剣に弱々しく寄り添って立つ小さな緑、魔皇達の前でその苗木は傍らに立つ剣を包み込む様に枝を絡ませていた。それは植物のしなやかな力強さ、生きようとする意志を宿した姿――――
 ――大自然が与えてくれた、神魔に隔たり無く来る未来への可能性‥‥。
 何故ならその剣は‥‥
 諦め切れなかった再生の望みは、ここに来て共存の希望となった。やがてそこで存在の明らかとなるこの地に宿った再生の力、それは来るべき和平の架け橋なのかもしれない――――


 ――そして現在。
 プリンシパリティの動きは停滞している。
 何故か神帝の地位に座し、神帝軍を指揮するマティア。
 神機装置『エデン』を装備したテンプルムで、未だ札幌で沈黙を続けるフィリポ。
 旭川では、魔に属する者達と神帝軍の激しい戦闘は終局を見せはしない。
 そして、烈皇の意志を継ごうとする大天使の動向は‥‥
 神帝との決戦から6ヶ月が過ぎようとしていた――――
2004.4.30

●望まざる闘い
 ――デアボライズ魔皇
 それは正に代価交換。悪魔との契約‥‥。
 ギガテンプルムを陥落させた代償は人類に恐怖と哀しみを与えたのである――――

 約200余名の悪魔が解き放たれ、その猛威は北は仙台、南は大阪にまで広まった。
 友だった、仲間だった、或いは愛しい人だった者が、人の心を捨て去り、同胞に牙を剥く。
 そして魔に属する者達は、望まざる闘いを覚悟したのである。
 ある地域では神帝軍と共闘作戦を‥‥
 ある地域では殲騎を召喚しての待ち伏せ作戦を‥‥
 
 だが、破壊と死を撒き散らす悪魔の実力は、魔に属する者達にも計り知れないものがあった。
 この望まざる闘いで、何人かの魔皇が命を絶ったのだ。
 ――哀しい闘いは更に哀しみを生む‥‥
 ただ、彼らは仲間だった者を暴力の輪廻から解き放ち、開放してやりたかっただけなのに‥‥
 あまりにも哀しい闘いは、新たな犠牲の元に終焉を迎えたのである。

 しかし、事態は新たな波紋を打った。
 いつ、人の心を捨て去るかも知れない魔皇に、穏健派の権天使達ですら危惧を感じたのだ。
 そして、人類の魔皇への反感は深い哀しみと怒りの中で増大してゆくのであった。

 ――刻が来れば紫の夜は行使されるであろう。
 魔皇達は二度と同じ過ちを起こさぬようにと胸に誓う。
 その決意は果たして揺るぎないものなのであろうか?

 人類を巻き込んだ神魔の戦いは、終焉へと加速する――――


●雪花奪還作戦――江別テンプルムを破壊!
 ――4月某日
 雪花の司一葉は自衛隊第7師団、第2師団、そして新しく帯広の第5師団と共同戦線を張り、露呈した雪花上空に鎮座する江別テンプルム破壊及び雪花奪還作戦を発動。
 作戦に参戦した37名の魔に属する者達は、自衛官の駆る空挺ヘリで江別テンプルムへ接近する中、夥しい数で待ち受けるサーバントの軍勢を、1000人規模の自衛隊員のバックアップにより次々と殲滅してゆく。
 バルカン砲がけたたましい雄叫びを響かせてサーバントを薙倒し、ロケット砲が白煙の尾を引いて放たれる。戦闘は、数の暴力に対抗する手段を得た魔に属する者達が優勢に展開していった。
 こうしてテンプルム上層外壁に降下した6班の魔皇部隊は、各々の任務を遂行、統率されたチームワークにより、マザーの息の根を止めるに至ったのである。
 ここに江別テンプルムは陥落したのだ――――

●講和会談――シモンとつばさ
 ――四月下旬
 神戸にて、プリンシパリティ・シモンとヨハネ、瑠璃の司・つばさによる会談が行われた。
 会談はまずテレビカメラを通じて、つばさが人間達にデアボライズ暴走の謝罪をした事から始まり、瑠璃においてはデアボライズした魔皇を極刑を持って処罰すると宣言。また、その被害からの復興・支援には要求があれば全力を尽くす意志を広く伝えたのである。
 次の議題『魔は隠れ家を出ず』というシモンの要望は神魔双方共に肯定的だった。
 現在の状況を鑑みて当面の魔に属する者側の諜報活動も容認されたが、その際、ヨハネから魔皇殻・DF・特殊能力など人間への力の使用を禁止し、違反者には極刑を含んだ罰則付ける事を前提として出されたのである。その代わり『自分は人間を傷つけない』程度の口約束ではない、罪をきちんと公にして罰し人間達にも納得させられるシステムを作り上げたならば、隠れ家からの出入り自由も考える意思がある事を告げたのだ。これにシモンも消極的ではあるが賛同の構えを見せた。

 ――ヨハネからの停戦協定に従わない者の処置をどうするか?
 ――他の隠れ家が神帝軍に対して行動を起こした場合の拒否・妨害は可能か?
 そのような質問に対し、瑠璃は平和に向けた強い意志こそ示したが具体的な方針は定められておらず、後日改めて、との返答に失笑をかう。

 魔に属する者側の要望である感情搾取の停止は、現状では不可能との回答。
 感情搾取は一律に行われる為制限を加えるなどは難しく、また停止すればテンプルムや天使達の存亡そのものにも関わる。代わるエネルギー源を模索する為にも、当面は現状を変える事はないらしい。イベントによる故意の搾取も問題に上がったが、こちらも集客率による経済問題などが絡み、難色を示した。
 ただし、人に対して害を為す事を前提としたイベントはきつく取り締まられる事となり、それを違反するような場合は、例え停戦協定を結んだ魔に属する者からでも手出し可能を認可したのである。
 しかし、他の地方に点在するテンプルムで使用されている感情搾取強化装置・対魔兵器の開発は、管轄の問題もあって『なるべく考慮する』とだけに留められた。

 ――話し会いはその他の議題を含め、丸一日かけて行われた。
 講和会談の内容は後日、マスメディアを通じて世間へも報道されたのである。
 だが、世界からみればまだまだ小さな話し合いでしかない。
 この先の神魔の動向により、会談が意味を成さなくなるのが双方の懸念として残った――――
2004.4.15

・翡翠決戦の軌跡
 ――ペトロの死。
 一ヶ月前の翡翠決戦の記憶は現在(いま)も色褪せてはいないだろう。
 南の司・鼎の指示により、非戦闘員である逢魔2000名は翡翠を捨てて先行疎開。古の隠れ家に『リトル翡翠』の建設を開始、後に決戦に参戦した6000名の逢魔の生き残りが合流した。
 だが、本拠地・翡翠を捨てて疎開した代償は計り知れず、特に経済的な打撃は徐々にその活動に現れてきている。疎開に掛かった費用は勿論のこと、僅か数日の急日程では家財道具など持ち出す余裕はなかった。それでもペトロの大攻勢を前に非戦闘員の被害を最低限に抑え、三倍以上と言われた戦力差を前に五分に持っていったのだ。疎開作戦は最上の選択だったと今は判断すべきだろう。
 そんな事前作戦の元、神帝軍は翡翠に誘き寄せられる形となり、地の利を生かした翡翠勢と鼎の秘策によってペトロは討たれたのである。
 メディアを通じて大々的なプロパガンダを張ったにも関わらずペトロを失うという結果となり、その動揺は民衆に隠しきれるものではない。決戦直後の混乱はセフィロトの木による統制で比較的早期に収束したものの決戦の結末は痛み分けという他ないだろう。これまで磐石と思われてきた九州の神帝軍支配も徐々に、だが明らかに揺らぎ始めている。それは、今だ天神に還らぬ福岡メガテンプルムの不在という事実が如実に現していた。

・福岡メガテンプルム陥落の真相
 翡翠決戦はここ九州の神魔の戦いにおいて最大規模にしてまた最大級の混戦となった。双方ともにどれだけの被害が出ているのかすら一月たった今でも正確な情報は掴めていない。
 福岡メガ陥落――そんな噂が一部の魔皇や密の間で囁かれているが、多くの魔皇は「福岡メガは北を目指して敗走した」と証言しているらしい。また決戦直後には大分県の酒呑天童子山付近で決戦直後からグレゴールによる広範囲の警戒態勢が敷かれたという情報もあるが、翡翠の森に重なる阿蘇山周辺も同時期に立ち入り禁止区域となっており、真相は掴めていない。
 だが全長4km程にまで成長した巨大飛行物体の目撃情報が何かしら出てきていないことから、少なくとも福岡メガが決定的な被害を受けたことは最早疑いようもないだろう。
 この他にも未確認ながら、撤退戦の混乱でロイヤルガードが全滅した、また鹿児島テンプルムからの増援が緑城と翡翠の森を焼き尽くしたとの証言も、激戦を生き延びた魔皇達からあがっていた。ペトロの片腕にして悪名高き魔皇狩り部隊の統率者・大天使カマエルが討たれたという情報もある。決戦よりようやく一月、疎開後の混乱からようやく落ち着きを取り戻したリトル翡翠の者達は、現地へ調査隊を派遣し、決戦直後の未確認情報の追跡調査に乗り出すこととなった。
 ――福岡メガテンプルムは如何にして落ちたのか?
 ――大天使カマエルの生死の真相は?
 調査隊により、真実が浮かび上がろうとしていた‥‥。
2004.3.15

・台頭する者
 神帝は、文字通り斃れた。塩の塊となったその亡骸は、墜落したギガテンプルムの中で粉々になっているはずである。
 また福岡では十三使徒のペトロが、『翡翠』の司、鼎の必策によって討たれた。札幌テンプルムのフィリポは動かず、事を静観している。いや、何も出来ないのかもしれない。すでに、こうなってしまっては。
 首長を失った神帝軍は、瓦解するはずだった。少なくとも、魔皇と逢魔たちはそう考えていた。
 だが。
『我々は一敗地にまみれた! だがそれがどうだというのか!』
 マティアが、公共の電波にその姿を現した。新たな為政者として。
 長髪の、美麗な青年の姿をしたその顔は、神帝にそっくりだった。ブラウン管の中の姿を見て、歩美は思わずテレビのリモコンを取り落とした。
「どういうこと……」
 神帝軍にはまだ、何か秘密がありそうだった。
・地球エデン化計画
 3月15日。神帝城で激しい戦いが繰り広げられていた頃――。
「札幌の『密』連絡が途絶えました! 全員です!」
 『密』とは、逢魔の情報機関である。スパイであり、時には工作員にもなる。魔皇のために情報を収集するのが仕事で、神帝軍の動向をつかむ最前の者たちだ。
 札幌で、何か異変が起きていた。一葉が東京戦線に出払っていて『雪花』の留守を預かっていた逢魔、レプリカントのエルオールは、その報告を聞いて近郊の『密』を総動員した。その結果は――。
「札幌に、未知の結界が張られているんですか?」
 『密』によると、札幌全域に、侵入すると精力を奪われるようなタイプの結界が張られているらしいことが分かった。札幌の『密』は全員、この結界の影響で衰弱死したのであろうと思われた。
「魔皇さまは入れるのかしら……それよりも、中の状況は……?」
 威力偵察を行った者たちからは、札幌の十三使徒“裁皇”フィリポが、資材を集めて『何か』の準備しているらしいことは分かっていた。だがその詳細までは分かっていなかった。
 ――神帝が倒れた今、十三使徒には統率者はいないはず。
 崩壊し、墜落したギガテンプルムの映像を見ながら、エルオールは思った。
『この惑星全てをエデンとする』
 彼女が神帝の言葉を聞くのは、まだ先の事だった。
・解き放たれた災厄
 死滅、死滅、死滅。
 デアボライズし、逢魔の元に戻れなかった魔皇の数は200名余。そして戦いの中で死んだのはごく少数で、ほとんどが巷に解き放たれた。
 そして関東近圏で、1日の間に数万名の人間が死亡した。デアボライズした魔皇に、精気を吸収されてしまったのである。ほとんど街一つ単位で、人が死んでいるのだ。しなびた野菜のように。
 デアボライズの暴走は、止まらない。あとは死ぬか、自滅するしか無い。
 しかしその間に、日本列島ですら壊滅してしまうであろう。パンドラの箱の中身は、勝利と無辜の人々の大量死――。
 この事態を、魔皇たちは収拾しなければならない。さもなくば、最悪の結果を迎えるであろう。彼らは、凶悪なる破壊者なのだ。
・対立と軋轢
「私は、一葉さまの考えには賛同できかねます」
 隠れ家『瑠璃』の司つばさは、『雪花』の司一葉に対する姿勢をついに定めた。その選択は、『対立』である。今や鼎を差し置いて主戦論派の主峰となっている一葉に対し、つばさははっきりと『NO』を告げたのだ。そして3月頭に、『基幹ネットワーク情報破壊作戦』が行われ、自衛隊の名簿や住基ネットのデータをクラックし、一葉がこれ以上デアボリカ戦力を増やせないようにしたのである。
 両者の対立はもはや深刻な所にまで来ており、和解の道は見えない。ただ一つの条件は、今すぐ神帝軍が穏便に地球から去ることだけだが、そのような事が出来るはずがない。
 この不和はすでに、神帝軍の知るところである。そしてそれは、また一つの悲劇をもたらす結果となった。


・デウス エクス マキナ
「神は私たちに、インファントテンプルムを介して新たな命を下されました。それは、『人間に仕えること』。今の私たちは人間のために在り、そしてやがて消え行く存在なのです」
 2度目の会見で、ユディットはその本懐を明かした。新たなる命令、新たなるプログラム。インファントがもたらしたものは、真の和平への道。神は在る。そして人間を見守っている。そしてその意思は、インファントたちに委ねられた。彼らは模索する。平和への道を。その先にあるものが、自身の消滅であろうとも。
 その時、魔皇たちはどうすべきなのか? 新たな命題に、答えるべき者は居ない。

 そして、戦いは続いてゆく。真の終末に向かって。
2004.3.15

・決戦前
 神帝の居城、ギガテンプルムを叩く――。
 ニュースでは一週間ほど前から、ギガテンプルムに対する攻撃予告の報道が流れている。差し渡し4キロメートルもあるメガコンストラクチャーが墜落すれば、付近一帯がどうなるかは火を見るより明らかだ。横浜メガテンプルムの、墜落による被害の報告もある。それが人も建物も過密な東京となれば、なおさらである。
 そこで、人間への被害をよしとしない魔皇たちは、ギガテンプルムに対し正式に『宣戦布告』したのだ。中世の騎士のように、『決着をつけよう。日取りは3月15日だ』と、挑戦状を叩きつけたのである。
 愚かな行いだろうか? それは後の歴史が、判断する事であろう。ともあれ、サイは投げられたのだ。
 自衛隊の本営、首都東京の防衛を担う第1師団の本拠では、防衛庁長官葛城辰巳(くずしろたつみ)と『雪花』の司、一葉による、自衛隊の『神帝軍に対する』再軍備が着々と進められていた。3月初旬に『瑠璃』の司、つばさの元で行われたある作戦によって、日本のコンピューターネットワークの基幹データベースは丸ごと破壊され、住基ネットも自衛隊のホストコンピューター、そして神帝軍が被支配地の運営に使っていたデータベースも、九州の『セフィロトの木』以外壊滅してしまったのである。これはつばさが、はっきりと武力闘争による事態の解決に『否』を唱えた瞬間でもある。つばさは『デアボリカ自衛官』をこれ以上増やさないために、一葉に対し実力行使に出たのだ。
 効果は、てきめんであった。情報統制の多くをコンピュータに依存する現在の日本にとって、コンピューターはある意味絶対的な支配者であり統率者である。それが、殺されたも同然の状況なのだ。市民生活は混乱をきたし、かねてから準備していた一葉の『自衛官デアボリカ化計画』も、中途で頓挫した。
 しかし、練馬の第1師団及び習志野空挺団、富士教導団など精鋭ぞろいの『戦力』を得ることには成功しており、継戦能力に問題はあったが、ギガテンプルム攻略については由(よし)と葛城は判断した。
 戦場は、東京――。
 機は熟し、あとは激発の時を待つばかりであった。

・3月15日、黎明
 3月15日の東京の天気は、曇りだった。朝焼けが雲を赤く染め、次第にその領域を拡大してゆく。
 そして、変化は一瞬で訪れた。空が夕闇の朱に染まり、夜と化したのである。
「『紫の夜』が発動しました。魔皇さま、いよいよ決戦です」
 メガフロート『パンデモニウム』の中で、『古の隠れ家』の司、歩美が言った。場所は東京海上。周囲には随伴するように、殲騎が浮かんでいた。
 そしてさらにその周囲には、航空自衛隊のF−15ジェット戦闘機の姿があった。入間、三沢、百里の各航空隊の有志が、今回の魔皇軍の戦闘に加わったのである。彼らはグレゴール一人落すこともできないが、サーバントに対してならその威力を発揮できる。
「『パンデモニウム』前進! 攻撃を開始します!」
 歩美が言い、放たれた猟犬のごとく殲騎が飛び立った。
 ギガテンプルムの周囲では、早くも戦闘が起こっていた。先行した葛城率いる自衛隊第1師団と、魔皇軍先遣部隊である。攻撃ヘリAH−1Sヒューイコブラが空を押さえ、その下を90式戦車や74式戦車、普通科連隊を乗せた総輪装甲車が進んでゆく。
 先にも言ったが、サーバントに対してなら通常兵力も効果がある場合が多い。ヘリで地上のサーバントを追い散らし、強力なサーバントに対しては120ミリないし105ミリの戦車砲で対処する。市街が戦場となったが、避難勧告のお陰で人的被害は最少で済みそうであった。そしてネフィリムに対しては、魔皇らが駆る殲騎で対応する。
 今までサーバントという死兵のために苦戦を強いられた魔皇たちにとっては、初めて胸のすくような戦いとなった。近代兵器は充分サーバントを圧倒し、『数の暴力』という神帝軍の基本戦術を切り崩してゆく。
 サーバントは分断され孤立し、各個撃破されていった。彼らの骸(むくろ)の数が、戦果の証である。それは後から見れば酸鼻を極める光景かもしれなかったが、確かに『人間』が神帝軍に対して一撃を与えたという証左でもあった。
 やがて、本作戦の本隊――1000メートル級殲騎船『パンデモニウム』がやってきた。その装甲には殲騎が召喚され、魔皇殻を構えた固定砲座となっている。作戦は簡単だ。突撃し、突入し、ぶっ放す。横浜メガテンプルムでも使われた手である。先端部をテンプルム内部に突っ込ませ、内部からミサイル系魔皇殻で攻撃する。それだけだ。
 単純である。だが、それゆえに防ぎにくい。
 そして3月15日午前7時55分。
 殲騎船はテンプルムのどてっぱらに、突貫したのだった。

「ここは通さん! 通るというのならば、このヤコブを墜として行け!」
 大ヤコブの確認戦果は、ギガテンプルムの『蒼嵐』攻略戦における殲騎約400騎。守りの戦力は通常3倍計算になるので、この防衛戦では大ヤコブ一人で、1200騎分の戦力に相当する。机上計算に過ぎないが、それでもたった1騎で1000騎の殲騎を退けられる戦力足りえることは、尋常ではない。
 だが魔皇たちも、1年前のただ逃げるだけの魔皇ではない。研鑽(けんさん)と修練を重ね経験を積み、実戦経験を重ねた『兵士』となってこの神帝城に帰ってきたのだ。
 そして『魔凱(アクス)』、『悪魔化(デアボライズ)』という新たな力を得た。いまやその戦闘力は、互角かそれ以上のはずだ。
 ――やりとげてみせる!
 魔皇たちの、進軍が始まる。戦いは、射撃戦から始まった。そして、接近戦へと移行してゆく。ここでも大ヤコブは、尋常ではない戦いぶりを見せた。殲騎に迫り、叩き、次の殲騎へと飛ぶ。獅子奮迅という言葉の通りに、大ヤコブは戦いぬいて見せた。敵も味方もバタバタと墜ちてゆく。戦いは神帝軍有利に見えた。
 しかし。
「……魔皇さま、やはり、行われるのですか?」
「やる。神帝なんて化け物を倒すには、こっちも化け物にならなきゃだめだ」
 デアボライズ。悪魔化。真の覚醒。
 ――そして、暴走の証明。
 デアボライズは、非常に危険な手段である。具体的には、魔皇殻を全て装備した状態でスピリットリンクを切り、ダークフォースを使う。そしてわざと、魔皇の力を暴走させるのだ。それでも、成功するのは約3割ぐらい。必ず成功するわけではなく、そして戻れるかどうかは、やってみなくては分らなかった。破格の攻撃力を手に入れられるが、末路は悲惨だ。精気に飢えて死ぬか、自壊して消滅するか――。
 元に戻るための唯一の手段は、逢魔の祈りだけ。
 つまり、『絆』だ。
 それが今、試されようとしている。
 デアボライズは、ダークフォースを使っていればいつかはするだろう。それが勝利の決定打となるか、破滅への道行きとなるか――。
 ――GHAAAAAAAAAAN!
 猛り狂う黒い旋風がいくつも、大ヤコブに向かって突撃していった。黒い翼を生やした漆黒の人影――デアボライズした魔皇が殲騎のパーツをパージし、一個の昏き生命として、大ヤコブに向かって突っ込んで行ったのだ。
 ――なんだこいつは!
 そのパワーに、あの大ヤコブがたじろいだ。かつて無い『敵』の出現に、戦慄が走る。デアボライズした魔皇の力は、人間大でありながらあるいはヴァーチャーを駆る大ヤコブにも匹敵するパワーを持っていた。一撃一撃刻み込まれるたびに、ヴァーチャーの姿が揺らぐ。それは、ハルマゲドンに与する力。暴走する絶対の悪。凶悪なる破壊者。『神の子(グリゴリ)』を弑(しい)する力。
 『悪魔』、の顕現だった。
 四半刻後、数に圧されついに、大ヤコブのヴァーチャーは撃墜され、地上へと落ちていった。扉は破壊され、魔皇勢力は内部へとなだれ込んだ。
 GHAAAAAAAA――!
 破壊衝動が内部で沸騰し、叩きつけるべき目標を探す。目の前が真っ赤に染まって、あまり物事を考えることができない。ただ破壊するだけのモノと化して、神帝に突っ込んでいった。

・終焉
 ――ここでの戦闘は負けですね。
 冷静に状況を見ていた十三使徒“13人目の”マティアは、襲い掛かる殲騎をコリドーキャノンで破壊しながら思った。ここは後陣のエレベーターチューブである。ここからも、魔皇軍は侵入していた。
 すでに正門は破壊され敵は侵入し、大ヤコブも小ヤコブも討たれたと聞く。彼らを叩いた魔皇の『何か』の前には、もはや十全の勝利を勝ち取ることは出来ないだろうと思える。
 ――我々は、魔皇を追い詰めすぎたのでしょうね。それが『力』を、逆に彼らに与えることになってしまった。まさに『窮鼠猫を噛む』。もはやこの勢いを止められる者は、居ないでしょう。
 マティアが、騎首をめぐらせた。
 ――神帝軍が負けても、『私』は負けるわけにはいきません。私には、未来があるのですから。

 ギガテンプルムは、都心の中央部に墜落した。神帝は、文字通り斃れたのだ。塩の塊となったその亡骸は、墜落したギガテンプルムの中で粉々になっているはずである。
 そして関東近圏で、1日の間に数万名の人間が死亡した。デアボライズした魔皇200名余に、精気を吸収されてしまったのである。ほとんど街一つ単位で、人が死んでいるのだ。しなびた野菜のように。

 ――魔皇達は、勝利した。
 だがデアボライズの暴走は、止まらない。あとは死ぬか、自滅するしか無い。
 パンドラの箱の中身は、勝利と無辜の人々の大量死――。
 この事態を、魔皇たちは収拾しなければならない。さもなくば、最悪の結果を迎えるであろう。彼らは、凶悪なる破壊者なのだ。
 ――これで、戦いは終わる。
 誰もがそう考えていた。

デアボライズした魔皇
■デアボライズした魔皇の姿。

 ――同日(雪花)
 3月15日、それは行われた。江別テンプルムによる『雪花』の奇襲。コアディメンジョンキャンセラーを装備したテンプルムは『雪花』に肉薄し、隠れ家はCDCの直撃を受けた。
 その結果、雪花は崩壊。十勝岳中部に出現・露呈し、そこを神帝軍に襲われ、一部の者は旭川テンプルムの浮かぶ元十三使徒の、ユディットの元に逃げ込んだ。
 『雪花』人口は定かでは無いが、6000人は下るまい。旭川には、神帝軍に対して造反した自衛隊第2師団がある。彼らの手を借りればあるいは『雪花』を取り戻すことが出来るかもしれないが、今は一葉の帰着を待つしかない――――
2003.12.27

メガフロート ■戦況報告2004初頭
 全国で、神帝軍は退けられています。その中でも今回、もっとも重要と思われる事をピックアップしました。世界は大きく動いています。状況の推移は激しく、全体像もぼけてきました。生き残るための戦いから勝利のための戦いへ――私たちの戦いは、次のステージへ移ろうとしています。







・隠れ家サミット
 2003年12月27日――。
 『古の隠れ家』黒き古城。
 そこに、各地の司が集まった。北の隠れ家『雪花』からはウインターフォークの一葉。西の隠れ家『瑠璃』からはフェアリーティルのつばさ。そして南の隠れ家『翡翠』からはインプの鼎。そしてホストは、『古の隠れ家』の司となったナイトノワールの歩美。
 サミットは、城の『黒曜石の間』という場所で行われた。近況報告に始まり、互いの意見交換が行われる。ホストの歩美が遅刻したのはご愛嬌。

一葉:守っているだけでは、彼我の兵力に差のありすぎる我らに勝ち目はありません。
 『雪花』の司、一葉は、自衛隊との共闘の姿勢を明らかにした。『人類魔人(デアボリカ)化計画』という計画――平たく言えば、人間をすべて悪魔化してしまおうという計画をぶち上げ、神帝軍との徹底抗戦の構えを見せている。そのほとばしる激情は、主戦論派の鼎をも凌駕しているかもしれない。すでに彼女は行動に移り、旭川で成果を挙げている。
 しかし、魔皇たちの反発は強い。

歩美:古の隠れ家まで、遠路遥々お疲れ様でした。
 魔凱(アクス)とメガフロート。この二つの重要物件を握る『古の隠れ家』の司、歩美は、その管理についての提言を行った。
 魔凱については各隠れ家に配布し、司が管理を行い必要に応じて魔皇たちに貸し出すことに決まった。メガフロートについては、次の神帝城攻略戦でも使われる事が決定している。そのさいには、『紫の夜』を使えるよう内部に『儀式の間』を設ける予定だ。これで失われた『蒼嵐』を拠点としていた関東圏における紫の夜のカバー範囲を、補う予定である。その威力は、今回の横浜メガテンプルム攻略戦においても遺憾無く発揮された。

鼎:生命の持つ至高の輝きである『生きる喜び』をわらわは捨てたりはせぬぞ?
 『翡翠』の司、鼎は、交戦論を押し立ててきた。インファントテンプルムの各個撃破に、香川で発見された、メガフロートに類する小型殲騎船の実戦配備。戦いの転機と人があれば、鼎は逆転してみせるという。福岡テンプルムのペトロに対する、積年の恨みもあるようだ。
 ただ今は、事後についての配慮に腐心しているらしく、メディアを使って魔皇たちの生活を元に戻すことなどに心を砕いている。本人は、事件が終わればかつての逢魔のように、ひっそりと生きてゆくつもりのようだ。

つばさ:そうですね……隠れ家を取り戻す……守るための戦いですから……賛成……です。
 『瑠璃』の司、つばさは、戦闘そのものを否定する姿勢を見せて魔皇たちの不興を大きく買った。戦いを憂える姿勢は評価できたもののサミットにおける発言に実りのあるものは少なく、非戦論者というよりは泣き寝入りに近しい態度に、魔皇たちから『否』の声が上がったのである。つばさは、瑠璃自体にさらなる『結界』を張り巡らし防備を固めるつもりのようだが、それが神帝軍の支配のくびきから逃れられる手段とは思えない。実際魔皇たちからは、戦略・戦術における『具体的な抵抗案』の提案が多かった。『蒼嵐』を取り戻したいという協調姿勢はあったが、一葉の『人類総魔人化計画』に対しては断固たる拒否の姿勢をしめしていた。
・総括
 サミットでは『魔凱』の取り扱い、『メガフロート』の使用、『蒼嵐』奪還、『事後の魔皇たちの生活の保障』の4点について合意が得られた。だがそれ以外のことについては、ほとんど合意に至らなかった。鼎などはわりと柔軟な姿勢を見せていたが、一葉はかたくなまでに神帝軍の撃退に固執しており、どのような犠牲もいとわない姿勢を見せていた。歩美はホストに徹して能動的な発言は控えめだったが、一葉の『人類総魔人化計画』に興味を示していた。曰く「司になる前みたいに、楽しく出来るのなら――」とのことである。つばさは戦争回避の手段を模索しつつ、黙したまま隠れ家へと帰っていった。
 魔皇たちが一枚岩となる日は、まだ遠そうである。

・自衛隊蜂起・北部方面隊第2師団
 去る2003年12月27日。その一週間前ほどから起きていた自衛隊北部方面隊第2師団(旭川)の篭城は、ワイドショーをにぎわせ、全国の人々に衝撃を走らせた。まだそれだけの『気骨』を残していた人間が居たこと自体驚異的だが、その蜂起が成功し、旭川から神帝軍を追い出してしまったのだ。
 画面には粛々と並ぶ戦車の砲列が映り、そして広所に誘導されたサーバントの群れと2騎のネフィリムを、その砲撃で殲滅せしめたのである。ただの一斉射で。
 旭川駐屯地にある戦車の数は92両。そのうち120ミリの強力な砲を持つ90式戦車は少数であったが、105ミリ砲を装備する74式戦車を主力とした戦車隊は市内の高所に陣取り、魔皇たちの誘導したサーバントならびにネフィリムをメディアの前で砲撃、殲滅したのである。
 指揮を取ったのは、防衛庁長官・葛城辰巳(くずしろたつみ)であった。
 戦車隊はその後、旭川ならびに『聖鐘』テンプルムを攻撃。甚大な被害を与えて、テンプルムを市外へ追い出したのである。
 これが、一葉の施した『策』。人間の『魔人化』である。人間の魂を抜き取り半不死の悪魔にすることで、限定的ながらもダークフォースを使えるようにしたのだ。
 彼らは、『デアボリカ』と呼ばれている。

・悪魔化(デアボライズ)
「魔皇には、さらに上の段階に覚醒する『悪魔化(デアボライズ)』という秘術があると聞きます。なんでも、原初の魔皇と同じ力を持つ事が出来るとか。それが実現するならば、この戦局も大きく動くでしょう――私の望むように」
 非公式に行われた、十三使徒“法皇”ユディットと、魔皇たちとの会談を録音したテープから抜粋したものである。話をしているのは、ユディットだ。
 しかしこのデアボライズについては、多大なリスクを伴うらしい。
 まず一つに、一度デアボライズすると元に戻る事が出来ない。二つ目に、大量の精気を食うらしく、周囲の人間からそれを奪取してしまう。そして三つ目には、制御が利かず暴走する可能性が高い――その先にあるのは、死と精気不足からくる飢餓だ。
 しかし素手でありながら殲騎以上の力を得、魔皇殻のパワーも威力も格段に上がるという。戦いにおいては、死と引き換えにする価値があるかもしれない。
 選択するのは、魔皇たちである。

防衛庁長官・葛城辰巳と雪花の司・一葉。
■自衛隊・北部方面隊第2師団と防衛庁長官・葛城辰巳、雪花の司・一葉。
2003.12

■事件
・前橋JRダイヤ混乱
 「電車の乗客の中に逢魔がまぎれこんでいる」という情報をつかんだ神帝軍が、群馬県JR前橋駅にて乗客の検査を行いました。この時魔皇と思われる者数名が現れ、サーバントやグレゴールと戦っている姿が確認されています。
 しかしサーバントを使って電車の運行を強制的に止めさせたにも関わらず、神帝軍の者たちは魔皇と逢魔の逃亡を許し、この事件のためにこの日のダイヤ運行は大幅に乱れ、市民の間では神帝軍に対する不満が高まっている模様です。

■『密』の報告より
・高松神帝軍軍事教練
 高松テンプルムから、ネフィリムが3体飛び立ちました。それらは瀬戸内海の小島を拠点に戦闘訓練を行っている様子で、香川県下で密かに噂されている、『古の隠れ家』に関する一連の騒動が原因ではないかと言われています。
 2週間にも及ぶ戦闘訓練は、最後は新たに加わった一体のネフィリムが、3体のネフィリムを圧倒する力で打ち倒して終わったと言われており、この4体目のネフィリムを操縦していたのが、香川県を統括するグレゴール、最空であるかどうかが目下の議論の中心になっています。

・十三使徒に異変アリ
 十三使徒の欧州監督官だった“法皇”ユディットから、魔皇に対する接触があった模様です。詳細はまだ不明ですが、追って続報を行いたいと思います。

・自衛隊北部方面隊第2師団(旭川)に異変アリ
 北海道は旭川にある自衛隊第2師団で、神帝軍に対する蜂起の気配が見えています。音頭を取っているのは、防衛庁長官葛城辰巳の模様。葛城には何か秘策があるらしく、魔皇の呼応も待っているようです。近々、その具体的な作戦も明らかになるでしょう。
 なおこの一件に関しては、水面下で『雪花』の司、一葉様も関わっているらしく、近日それに関わる依頼が出されるようです。

・遺失巨大殲騎船“メガフロート”名前募集
 古の隠れ家で発見された1000メートルクラスの巨大殲騎船、仮称『メガフロート』の、正式名称を募集します。募集対象は『メガフロート』本体、艦載らしい80メートルクラスの『船』の呼称。
 殲騎船の外観図はこちら
※募集は12月22日で締め切りました。たくさんのご応募ありがとうございました。
■『司』よりのお言葉
 みんな元気? 『古の隠れ家』司の歩美でっす!
 今日は皆さんに、少々お小言を言いに来ました。差し出がましいようですが、最後までお聞きくださるようお願い申し上げます。

・蒼嵐脱出の際……。
 さて蒼嵐脱出の際、一般民間人にかなりの被害者が出ました。また脱出の際、バス調達に各運行会社を襲撃する魔皇様が後を絶たず、浚われた運転手が監禁され、身包みはがされて放置されると言う事件も起きています。
 さらには、首都高速道路下において、外壁の破壊、深夜の暴走等、住民の事をまるで考えて居ない行動が目立ちました。
 その影響で、東京都内においては、魔皇に対する感情が著しく悪くなっています。

・温泉で……。
 魔皇に対する敵対心のある中で、温泉に潜伏したサーバントを殲滅しようと、温泉レジャー施設に潜り込んだ魔皇達が居ました。
 しかし湯船から一般人を締め出す、その中で戦闘でも何でもない追いかけっこを繰り広げる等、一般人の迷惑を顧みない行為をしたために、都内の公共施設では暴力団関係者と同じ扱いを受けています。

 魔皇様。感情に正直なのはよろしいのですが、もう少し周りの状況を見て行動していただけると幸いです。神帝軍のプロパガンダに利用されてしまいますので……。
 それでは、今日はこの辺で。生き残るために、皆さんがんばりましょう! それじゃっ!(^_^)v
2003.11

■事件
・明石テンプルム墜つ!
 11月15日。
 紫の夜に乗じて、明石テンプルムが魔皇達によって落とされました。
 明石テンプルムは播磨灘沖に沈み、装備されていたコアディメンジョンキャンセラーも完膚なきまでに破壊されたとの事です。マザー・コマンダーの死亡も確認され、残された多くのグレゴール・ファンタズマが神戸メガテンプルムへと逃げ込みました。

■戦時局面03・11・15
 去る9月15日に『紫の夜』を発動させた神帝軍の第一次隠れ家侵攻作戦ですが、これはどうやら罠だった模様です。どこの戦闘でも十三使徒は戦いに加わらず戦場を睥睨するだけでしたが、どうやらこれは『紫の夜』を発動させることによって、夜の中核=隠れ家結界殻の要をさぐる意図があったらしく(現に、『蒼嵐』はすでにCDCによって消滅している)、現在『雪花』『瑠璃』『翡翠』の位置は神帝軍に完全に発覚している模様。今後はCDCテンプルムによる再度侵攻が予想されます。
 なお11月15日に行われた第二次隠れ家侵攻作戦では、『雪花』に室蘭、『瑠璃』には大津、『翡翠』には熊本テンプルムがCDCテンプルムとして駆りだされましたが、いずれも魔皇と殲騎の働きにより撃退ないしは撃破されました。
 それと、『密』による諜報戦略ですが、ここに来て急に神帝軍に関する情報があふれ出し、密たちはどれが本物の情報なのか選別に追われています。現在のところ情報ソースが不明なものが多く、行動も慎重を期さねばならないのですが、情報は正確なものが多く密たちは戸惑いの色を隠せません。

■防衛庁長官葛城辰巳より魔皇軍に接触アリ
 先の神帝城脱出作戦で魔皇とのパイプの確保を確約した防衛庁長官葛城辰巳が、魔皇軍との接触を求めているという情報が入りました。彼の目的は自衛隊による蜂起を促すことらしく、陸・海・空の各自衛隊による軍事クーデターを目論んでいる模様です。賛同者は多いらしいのですが詳細は不明。協力するか否か、『司』の判断が待たれます。

■『密』の報告より
●兵庫県明石テンプルムCDCその後
 11月13日。魔皇の活躍により明石CDCが破壊されました。修復にはしばらく時間がかかりそうです。予想では2ヵ月後に再侵攻が予想されます。

●滋賀県大津にCDCテンプルム!?
 11月15日。滋賀県大津琵琶湖湖底に、大津テンプルムが確認されました。これは、神帝軍が瑠璃攻略にあたって明石テンプルムの予備に準備していたものらしく。大天使『織田信長』の軍勢と共に瑠璃侵攻に向かいました。

●魔皇バンド――名古屋
 先日名古屋にて、とあるインディーズバンドが「自分たちは魔皇である」と告白しました。このことを受け、神帝軍は名古屋における無許可の音楽活動を全面的に禁止。現在厳しい取り締まりが行われています。
 11月に入ってからも神帝軍主催のイベントにおいてゲリラライブを行ったグループがあり、神帝軍はよりいっそうの規制強化を関係各所に要請しています。

●鐘の鳴る街――旭川
 神帝軍の新兵器『聖鐘』が装備された釧路湿原テンプルムが、その第1期工事を終えて浮上しました。このテンプルムの持つ新兵器『聖鐘』は、半径10キロメートルという、ギガテンプルムの『絶対不可侵領域』に匹敵する広大な範囲に影響を及ぼし、その範囲内の魔に属する者の思考や行動を80パーセントほどに減ずる能力を持っています。今はまだテスト段階のようですがすでに実戦投入されており、釧路湿原テンプルム攻略戦ではその能力で魔皇軍を苦しめました。現在釧路湿原テンプルムは、攻略戦における被害の補修とエネルギー源である感情吸収、そして護衛のネフィリムやグレゴール、サーバント補給のため、旭川上空にあります。この神殿には、十三使徒の一人“法皇”ユディットが在務していることがわかっています。

●『真・魔皇殻』調査進む
 蒼嵐に居た逢魔の避難所となった『古の隠れ家』の遺跡類、そして『蒼嵐』秘密の部屋で発見された原初の魔皇殻『真・魔皇殻』の調査が、順調に進行しています。『真・魔皇殻』とは、かつて『原初の魔皇』が使ったとされる、我々が現在使っている魔皇殻のオリジナルと言われています。
 現在優先的に調査されているのは、『真・クロムブレイド』『真・ビーストホーン』『真・葛藤の鎖』『真・クロムライフル』『真・ワイズマンクロック』の五つで、近日実戦投入が実現しそうです。
2003.10

■『密』の報告より
●名古屋まつりにてプリンシパリティ演説
 10月12日、愛知県名古屋市で行われた名古屋まつりの、『郷土英傑行列』に神帝軍が参加しました。織田信長、豊臣秀吉、徳川家康といった面々に市民が仮装し市内を練り歩くこの行列に、数多くのグレゴール・ファンタズマが参加し、神帝軍の威光を人々に見せたようです。
 また、行列の最後には、名古屋メガテンプルム直下にて、プリンシパリティの1人、烈皇タダイが神帝軍の目的を演説し、人々の意気を高めました。
 なお、烈皇タダイの副官である大天使は「本物の」織田信長であることが明かされ、郷土の英雄の復活に市民は戸惑いながらもこれを歓迎しています。

●兵庫県で爆破騒ぎ
 10月23日明石発。神帝軍主催の『サーバントバトル大会』で人が賑わう中、爆破騒ぎがありました。死傷者はいませんが、これにより大会は中止。その後テンプルムから人が降って来た事と併せて、神帝軍は魔皇の仕業と発表し、市民の魔皇に対する不信感を高まらせています。
 ただ、爆破騒ぎにおいて魔皇らしき者が逃げているという目撃はありましたが、暴れていた姿を見たとする市民はおらず、市民の中には神帝軍に対して疑問を投げかける者も居ました。

●兵庫県明石テンプルムCDC
 10月24日。明石テンプルムにてCDCが発見。明石の動向からして近く瑠璃への攻勢に出る事が予想されます。
2003.09.20

●呉テンプルム墜つ!
 瀬戸内海播磨灘。
 隠れ家『瑠璃』直上に攻め寄せた神帝軍呉テンプルムは、魔皇軍の激しい抵抗にあい、播磨灘海中にて撃沈された。一勢力としては十分な数をそろえてきた神帝軍だったが、『瑠璃』魔皇軍はこれに対し『紫の夜』を発動。殲騎を用いた徹底抗戦の構えを見せ、多数のネフィリムとともにこのテンプルムを葬り去った。
 『司』のつばさは今回の事態を憂慮し、隠れ家の安全のために新たな結界の敷設を思案中とのこと。これがいかなる結界となるかは、今後の各隠れ家の動向によると思われる。

●沖縄テンプルム、阿蘇山に沈む
 九州中央山地。
 隠れ家『翡翠』直上では、沖縄テンプルムによる翡翠侵攻が行われた。神帝軍侵攻時、『司』の鼎は即時に『紫の夜』の発動を決め、殲騎による隠れ家防衛戦が繰り広げられた。
 結果、沖縄テンプルムは崩壊。阿蘇山火口に墜落し、神帝軍も撤退していった。鼎は隠れ家の保有戦力に自信を深め、近く攻勢に出ることを考えているもよう。

●大雪最終防衛ライン
 北海道大雪山。
 隠れ家『雪花』に対してもまた、『瑠璃』『翡翠』同様、神帝軍は戦力を差し向けていた。戦力は江別テンプルム一基とネフィリム150余騎。それと3000匹ほどのサーバント。
 これに対し、雪花の『司』一葉は『紫の夜』による迎撃を慣行。殲騎600騎あまりによる絶対防衛ラインを敷き、これを撤退せしめた。
 なお十三使徒の一人、“裁皇”フィリポの姿が見られたという情報が流れており、神帝軍の動向は今後も目が離せない状況になっている。

●『蒼嵐』その後
 隠れ家蒼嵐はその後、旧高崎テンプルムの支配下にあり、現在は無人となっている。内部にはグレゴールからなる調査班が入り込み、調査を行っているらしい。成果は、今のところ不明。しかし内奥深く潜入しているらしく、蒼嵐にある秘密の部屋が無事であるかどうか、その安否が気遣われる。

●ロイヤルガード出陣
 先の『翡翠』防衛戦において、神帝軍の特殊戦隊『ロイヤル・ガード』の存在が明らかになった。これは福岡メガテンプルムを防衛する数十騎のネフィリムで構成されており、高度な訓練を受けた強力な敵として魔皇の殲騎の前に立ちはだかった。
 その任務の主たるところはメガテンプルムの防衛にあるらしく、翡翠で防衛戦で攻撃に転じた魔皇たちに対しても、その力は遺憾なく発揮された。
 このロイヤルガードは、今のところ福岡メガテンプルムにしか確認されていない。しかし他のテンプルムにも存在しないとはいえないので、任務を受ける際は注意が必要である。
2003.09

●明治神宮崩壊(9月15日)
 明治神宮。
 東京都渋谷区にある神社で、明治天皇と昭憲皇太后の二柱をまつる神宮である。明治天皇の没後にその霊をまつる神社の創建が計画されたが、1914年に昭憲皇太后が没すると、皇太后もあわせ奉(まつ)ることとなった。翌年、明治神宮造営局により東京代々木の現在の地において、造営工事に着手。1920年に竣工、官幣大社の社格があたえられた。
 境内は、延べ10万人にのぼる青年団など国民の勤労奉仕によって造成され、全国各地からの献木により約12万本の樹木が移植された。その種類は365種。
 太平洋戦争中の1945年、東京大空襲で社殿のほとんどを焼失したが、1958年には現在の社殿を再建。1960年には社務所や参集殿などの付属施設が復興し、その後、明治神宮会館、武道場、神楽殿が建設され、1997年秋には文化館が竣工する。境内は内苑と外苑にわかれ、外苑には聖徳記念絵画館や野球場など各種の施設がある。
 例祭は明治天皇の誕生日の11月3日、ほかに4月の昭憲皇太后祭、7月の明治天皇祭、11月1日の鎮座記念祭などがある。内苑北側の宝物殿には明治天皇、昭憲皇太后ゆかりの品が展示され、一般公開されていた。
 もちろん、新造された国家神道の建築物としては最大級のものである。
 その建築物が、破壊されていた。完膚なきまでに。
レポーター:「事件がおきてから五日。やっと自衛隊が、神宮内部に進入したもようです。あたり一面は血のにおいでしょうか、むせ返るような臭気が満ちています。目撃者の情報によると、ここ明治神宮に立てこもった魔皇たちは数百名。それに対し神帝軍は、1万近いサーバントを投入。戦闘によって内苑は壊滅。外苑にも相当の被害がでたもようです。上空から見下ろす神宮内苑は、まさに阿鼻叫喚の巷。累々たる屍の山が築き上げられ、血のしみが黒々とした川になって低地に流れています。恐るべきは、魔皇の力でしょうか。あ、今、巨大なの鳥のようなものが飛び立ちました。どうやらサーバントの死体の下敷きになっていたようです。自衛隊による内苑の処置が行われて、やっと今回の事件の検証が出来そうです……」


●戦況報告
 ここでは各地の、現在の戦況を時系列にそって報告しよう。

・9月15日 『蒼嵐』壊滅
 まずは『蒼嵐』。ここは9月15日、神帝軍の計略により、群馬県武尊山(ほたかやま)にあった隠れ家が、通常空間へ露呈するという事態に至った。現在、この隠れ家の殲滅を狙っているであろう、神帝軍に対する防衛作戦、また、周辺住民に対する避難誘導作戦などが行われ、各地で戦いが繰り広げられている。
 この時の『雪花』。北海道での神帝軍の活動が急に活発になったため、ここではその対応策を検討中。蒼嵐救出を唱える主戦論者たちが居る一方、雪花も蒼嵐の二の舞になってはと憂える者たちも多く、身動きが取れない状況になっている。また北海道では、神帝軍が新地開拓などを率先して行っており、魔皇軍殲滅のための準備が着々と進められているもよう。上川地方では、旭川テンプルム直下の旭川市で、魔皇による大規模な戦闘行為も見られたようだ。
 次は『瑠璃』。瀬戸内海、播磨灘海底にある瑠璃は、現在非常に危険な状態になっている。最近発見された、『淡路島の秘密の隠れ家』を探そうという神帝軍の動きが活発化したためで、上空を飛び交うネフィリムのために緊張はいや増し、逢魔たちにも混乱が広がり始めている。現在、司であるフェアリーテイルのつばさが皆をなだめているが、状況は一触即発という状態にまでなっている。
 最後に『翡翠』。九州中央山地にある翡翠では、司の鼎が演説をぶち上げ、逢魔達の士気を鼓舞している。
「『蒼嵐』の悲劇を繰り返してはならない! 志ある者は、わらわと共に立て! わらわと共に戦おうぞ!!」
 そのため翡翠では主戦論派が大勢を占めるようになり、危険な兆候が現れている。

・9月20日 強襲:雪花・瑠璃・翡翠
 神帝軍に新たな動きが見られた。蒼嵐強襲に引き続き、『雪花』『瑠璃』『翡翠』に神帝軍の手が向けられたのだ。
 『雪花』へは、札幌メガテンプルムより十三使徒の“裁皇”フィリポが出陣。また『瑠璃』へは、大阪メガテンプルムより“賢皇”ヨハネ、そして『翡翠』へは福岡メガテンプルムより“巌皇”ペトロが出陣した。
 これに対し、各隠れ家の司たちは『紫の夜』を発動。殲騎をもって、彼ら十三使徒率いる神の軍勢に対抗した。
(報道:矢佐間羅海)


●群馬・武尊山に隠れ家「蒼嵐」出現
 9月15日、群馬県武尊山(ほたかやま)のふもとに存在する隠れ家『蒼嵐』が、神帝軍のコアディメンジョンキャンセラー攻撃により、現世へ露呈してしまった。
 神帝軍は前回の敗北以降、隠れ家の正確な位置などの情報を事細かに収集していたようだ。魔皇たちには、逢魔で構成された情報機関『密(ひそか)』がある。神帝軍はそれにならい、この2ヶ月間グレゴールによる情報収集を行って来たらしい。かくして『蒼嵐』の位置は付き止められ、神帝軍に発覚してしまった。
 神帝軍のギガテンプルムが群馬に侵攻、隠れ家『蒼嵐』影の城では、司である『歩美』の号令のもと『紫の夜』を発動して応戦。魔皇たちは殲騎を駆り、『紫の夜』のもと、ギガテンプルムのコアディメンジョンキャンセラーをピンポイントで破壊する作戦を展開した。
 魔皇たちの活躍目覚しく、ギガテンプルムのコアディメンジョンキャンセラーは見事に破壊され、その機能を停止した。しかし、このギガテンプルム侵攻は、神帝軍による『囮』作戦だったのだ。
 巨大な翼を持つ「所沢神殿」が蒼嵐へ急襲。魔皇たちの力及ばず、所沢神殿のコアディメンジョンキャンセラーが『蒼嵐』に向けて発射された。所沢神殿は、どうやらコアディメンジョンキャンセラー用に特化された神殿であるらしい。
 所沢神殿は『影の城』手前で中枢を破壊され墜落、爆発。また、ギガテンプルムは撃退した。しかし、被害は甚大である。所沢神殿内部に居た魔皇たち。そして、陽動で戦っていた魔皇や逢魔。
 そして隠れ家『蒼嵐』の露呈。
 コアディメンジョンキャンセラーの、隠れ家への直撃は計り知れない痛手である。今までの、出入り口の小結界の封鎖と違い、隠れ家そのものを構成する巨大結界殻ともなると、その修復は容易ではない。今となっては、蒼嵐は丸裸も同然である。
 まるでパッチワークのように、現実世界の風景にかさなりあって見え隠れする蒼嵐の姿は、多くの一般人の目にさらされ、もはや隠れ家としての機能はないに等しい。
 神帝軍は、魔皇たちが陽動作戦を展開したように、ギガテンプルムそのものを囮にして、陽動作戦を展開したのだ。
 また、他の隠れ家各地でもまた、『紫の夜』が使われたという。
 状況は深刻である。今後の情報収集や、行動については、今まで以上に慎重を要する。
●阪神ティガーズ、優勝!
 9月15日、関西に拠点を持つ球団「阪神ティガーズ」が、念願の優勝を果たした。
 大阪では、勝利に沸く人々で、これ以上ない盛り上がりを見せている。優勝目前より恵比寿橋方面は通行止めになるほど人があふれかえっており、一時期パニック状態となった。なお、道頓堀川に飛び込みを敢行した人は5千人を超えたという情報も入っている。
 ティガーズ・越野監督はひとこと「しんどかった」とコメントしたという。

●長崎に『カテドラル』建つ
 長崎県では長崎市を中心にキリスト教系の教会を神帝軍が接収し、そこで癒しなどの慈善活動を行っています。また『カテドラル』と呼ばれる巨大な建築物をテンプルムの下に作り慈善活動を拡大化する計画を提示し、市民の支持を得ています。
 熊本県では、テンプルムの下にある熊本城の防備が固められています。
 沖縄から謎のコンテナが幾つも運び込まれ、城内でサーバントを目撃する機会が増えているようです。

●福岡『セフィロトの木』
 九州は福岡市で『セフィロトの木』なる超高層ビルができあがりました。
 全10セッションに分かれるこのビルでは、九州全体の政治、経済、医療、情報、農業、工業などの情報と施政が、神帝軍の管理下において取り決められるようになっている模様です。

●埼玉浄化作戦
 埼玉県入間市では、所沢神殿から逃げ出した魔皇が捕まり、アダムと呼ばれるグレゴールのシャイニングフォースによって記憶が奪われています。
 その影響によって入間市の拠点が襲撃され、魔皇達の記憶が奪われ続けています。
 その結果、入間市には多くの危険分子が潜伏している事が判明し、神帝軍はネフィリムを使った『浄化作戦』を開始しています。

●竜、現る――福井
 福井県福井市の県庁舎にボルケイドドラゴン(火山竜)が襲撃。撃退されるまでに県庁舎・県警本部に一部被害が出ました。この事件に関連する混乱は神帝軍と市民有志により最小限に抑えられています。
 ただ、火山竜を撃退したのは神帝軍ではない、との話もあり、調査が急がれています。一部では神帝軍の初動の遅さを非難する声も上がっています。

●所沢神殿に『翼』!?
 埼玉県所沢市にあるテンプルムに、巨大な『翼』が生えた模様です。これはなんらかの神輝装置と思われますが、その正体は不明。
 地元ではこの事態に対し、「観光名所が増えた」などと好意的な様子です。
2003.08

●魔皇覚醒――新宿・広島
 新宿にて、魔皇による一般人の殺害が発生しました。魔皇の力の発現が、他の一般人に目撃されています。その結果、魔皇の危機性が一般人に知れ渡ることになりました。神帝軍は、これをプロパガンダに使用している模様です。
 また同時に、広島県では覚醒した魔皇が巷に現れたことを論拠に、『隣人が突如として殺人鬼と化す』危険性について訴えています。魔皇が人々を退避させるために混乱を起こす手法をとっているためか、県民の心は新帝軍に寄り気味です。

●魔皇狩り部隊――愛知
 愛知県名古屋市南部には、金山という地域があります。そこが今回、愛知県警の警官隊によって封鎖されました。これには、今回明らかになった神帝軍の特殊部隊――通称『魔皇狩り部隊』が絡んでいると見られ、逢魔の密(ひそか)摘発を目的としている模様です。
2003.07

●『蒼嵐』防衛戦
 某日。隠れ家『蒼嵐』の攻略戦が行われました。兵力は、神帝城たるギガテンプルムに、ネフィリムが七〇〇機余。そして万近いサーバントで構成されています。
 神帝軍はギガテンプルムの翼――コアディメンジョンキャンセラーで蒼嵐の入り口の結界を次々と破壊し、そこにサーバントやネフィリムを投入していきました。
 対する魔皇軍は蒼嵐の本拠、『影の城』に篭城して敵の攻撃を防衛。しかし数で圧され、次第に劣勢へと追い込まれていきます。
 さらに、神帝軍はギガテンプルムの守り、プリンシパリティの『大ヤコブ』と能天使(パワー)級のネフィリムを投入。ヤコブは魔皇の戦線を一気に切り破り、戦いの趨勢を決めます。
 しかし、そこに新たな蒼嵐の『司』、ナイトノワールの歩美が覚醒。蒼嵐の結界を張りなおし、ネフィリムを全て結界外に弾き飛ばし、戦局を一気にひっくり返しました。
 現在、蒼嵐は結界が破られない状態になっており、神帝軍も次のステップに移る事を考えているようです。

●福岡観艦式
 九州は福岡で、にプリンシュパリティ『ペトロ』の手によって大々的な観艦式が挙行されました。
 ペトロは、強力なシャイニングフォースである『聖霊翔翼標<メタモルレーション>』によって人々の感情を高め、神帝軍の威光を見せ付けました。
 この行事は福岡全体で盛り上がりを見せ、福岡メガテンプルムは急成長し、人々の心も神帝軍に傾いています。
2003.06

●緋雨の葬儀とりおこなわれる
 6月某日。
 隠れ家『蒼嵐』では、司(つかさ)だった逢魔、ナイトノワールの緋雨(ひさめ)の葬儀が、しめやかに行われた。
 献花された緋雨の遺体は、美しかった。貌(かお)にはやるべきことを成したという安堵の表情があり、それがまた、他の逢魔たちの涙を誘った。
 緋雨の生涯は、凡庸(ぼんよう)というものからは、かけ離れたものと言っていいだろう。司として生涯魔皇を持たず、生きて戦い、死ぬまで戦い続けた。他の隠れ家の司たちも彼女には一目も二目も置いていたらしく、緋雨を失った現在では、その統制を欠いた形になっている。緋雨はまさしく、逢魔たちの要(かなめ)だったのだ。
『逢魔たちのことを、よろしくお願いします。魔皇様』
 この、緋雨の最後の言葉を、魔皇たちは厳粛に受け止めた。死すべき運命が待ち受けていようとも、彼女は成したのだ。神帝軍から魔皇たちを救うということを。
 我々は、この死を無駄にしてはならない。
 神帝軍は、この『蒼嵐』に着実に迫ってきている。かつての勝利者が、またも勝利をもぎ取ろうとしているのだ。
 反抗せよ。対抗せよ。抵抗せよ。
 勝利は、敗北から始まるのだ。
●ネフィリム生産工場
 神帝城脱出作戦において、魔皇たちに明らかになった、重要なことがあります。
 それは、ネフィリム(神機巨兵)の生産が、通常の工場のような工廠(こうしょう)で行われていたことです。
 ネフィリムの生産は、テンプルム内部で行われています。その生産工程は、素体らしき人型の物体に装甲を施し、仕上げを行うというもの。

 しかしその素体の組み上げは、工場のどこでも行われていません。これを不審に思ったある魔皇は、神帝城脱出作戦のさなか、最奥部への侵入を試みました。
 戦闘の混乱の中、侵入に成功した魔皇が見たものは、巨大な『栽培場』のようなものでした。そこには、丁度ネフィリムが入るようなサイズの繭のようなものがあり、その中に、まさしくネフィリムが入っていたのです。
 その魔皇は、「その『栽培場』には無数の繭があった」と証言しており、このことからネフィリムは、『成長する兵器』であるらしいことが分かりました。

●協力者 防衛庁長官・葛城辰巳(抜粋)
「それで、私に何の用かね?」
 護衛のグレゴールとファンタズマを倒し、神帝城奥深くに入り込んだ魔皇と逢魔は、探していた目的の人物に、幸運にも出会えることが出来た。
 防衛庁長官、葛城辰巳(くずしろ・たつみ)である。魔皇を前に一歩も引かない、肝の据わった男だった。
「……神をなのる者との戦いは、ただ魔の者が力を振るえば終わるというものではないでしょう。単純な二極の力のぶつかり合いは、世界を壊すだけ。ならば、必要なのは第三勢力としての『人間』の力のはずです」
「それで?」
 辰巳が問う。
「私は、この『人間』という勢力を作るためのパイプ作りをしたいと思っています」
「しかし、あのネフィリムをどうするのかね? あれには戦車の鉄甲弾もミサイルも、欧州では核も使われたそうだが、それすら効かないときている。人間の出る幕は、残念ながら無いだろう」
 辰巳が言った。いまにも歯噛みしそうな、苦い表情だった。
 確かに、この戦いには、人間の介在する余地は無い。ネフィリムやグレゴールは無敵で、その不死性を破る手段は人間には無いのだから。
 しかし、しかしである。
「戦い=(イコール)軍事力ではありません。私はあなたの『人間力』に期待しています。人間が行動する事で世界は、そして神帝軍の支配は揺らぐはずです」
 確たる信念をもって、魔皇が言う。
「私の言うことを理解していただけたのなら、私と一緒に来ていただけませんか?」
「断る」
 しかし魔皇の言葉に、辰巳は首を振った。
「君の言うことももっともだが、ここで私が誘拐されてしまえば、誰かが後任として私の職務を遂行するだろう。そうなっては、今ここで君と会談した意味が無い。私はここに残り、善後策を考える。君や君の仲間達とは、今後もパイプを持つようにしよう」
 要人誘拐という目的は達せられそうに無かったが、人間と魔皇の間に有益なパイプラインが作られそうであった。
2003.05

●悪魔の従者各地でテロ活動
 先に発表された“魔皇”の従者とされる種族“逢魔”が、世界各地のテンプルムでテロ活動を行った模様です。最も被害が多かった東京上空の神帝城のあるギガテンプルムでは、多数の未確認巨大ロボット兵器が、神帝軍のネフィリムと交戦、その被害はテンプルムの内外にとどまらず、多くの一般市民を巻きこみました。

●紫の夜と禁断の呪法
 関東の隠れ家「蒼嵐」の司(つかさ)の呼びかけにより、テンプルムが発生させている絶対不可侵領域を一時的に中和する儀式呪法“紫の夜”が決行されました。“紫の夜”の使用は、それに参加した逢魔達の力を著しく削ぎ、蒼嵐全体の力をも低下させてしまうという欠点がありましたが、まだ覚醒したての多くの魔皇を救い出すためには、これしかなかったのです。
 “紫の夜”は成功し、東京上空のギガテンプルの周囲では、魔皇たちが召喚した“殲騎”と神帝軍の巨大人型兵器“ネフィリム”との間で、激しい戦闘が繰り広げられました。しかし、ギガテンプルムを母艦とする神帝軍の力は想像以上に強力であり、逢魔たちの神帝城襲撃計画は思いのほか難航し、半数以上の魔皇たちが再び神帝軍に捕縛されてしまいました。この誤算は、グレゴール達が放った多くのサーバント(奉仕種族)によるものでした。
 このままでは、多くの魔皇と逢魔の命が失われる。誰もがそう思ったときに、蒼嵐の司である逢魔“緋雨”は、ある決断をしていました。
「“紫の夜”の効果があるうちに、魔皇様たちと捕らえられた逢魔全員を、蒼嵐に呼び込みます」
 緋雨は、近卒の制止も聞かず、禁断の呪法“ウイッシュ”を行使したのです。その“願い”は、神帝城に捕まった魔皇と逢魔を無事に蒼嵐へ連れ帰ること。
 願いは果たされ、ギガテンプルムの魔皇と逢魔は、無事に隠れ家“蒼嵐”へと召喚されました。しかし、その代償は大きく、緋雨は、命の最後の一滴までも絞りつくす事になってしまったのです。
2003.04

●発端
 いろいろな問題を抱えながらも平和そのものだった日本に、突如異様なものが現れました。東京上空に現れた“それ”は、全長4キロにもなる巨大な空中神殿だったのです。そして、同様の神殿(テンプルム)が、世界の主要都市と日本の地方都市に次々と現れました。
 それは、神帝軍(しんていぐん)の居城であり、戦闘空母でもある空中要塞で、人々からテンプルム、東京に現れたものはギガテンプルムと呼ばれるようになりました。
 神帝はすぐさま、ギガテンプルムから世界の統治を宣言します。そして、不思議なことにギガテンプルムが現れてから3日後には、世界中の人々が彼らの支配を当たり前のように受け入れてしまいました。
 神帝軍の長と名乗る“神帝”や、まるで中世の騎士のような尖兵“グレゴール(聖鍵戦士)”、そして、グレゴールが駆る巨大ロボット“ネフィリム(神機巨兵)”には、神々しいばかりの威厳があったのです。それら神々しい威厳の力が、大規模な戦争を回避させ、且つ、数日による支配を可能にしたかどうかについて確証はありませんが、地球の科学では証明できない何らかな不可思議な力が働いたことに疑いはありません。
 現在、神帝の支配下において世界の人々は、今までとほとんど変わらぬ生活を送っています。

●神帝支配地域での人々
 現在、神帝軍により強い感情を奪われた人々は、支配者である神帝軍に反抗する事無く、非常に無気力に暮らしています。無論、全ての人々が神帝軍を受け入れた訳では無かったのですが、現状を打破しようという強い感情を持つ事はありません。

●神帝と戦う者“魔皇”
 無気力となってしまった人類の中に、唯一、神帝に抵抗する者達が現れました。それが、読者参加ゲームやWTRPGでの主人公となる、魔皇(まおう)と逢魔(おうま)です。
 魔皇は、遥か古の時代に神に反逆した原始の魔皇の子孫たちであり、俗に悪魔と呼ばれている存在です。魔法的な力であるダークフォースを使いこなし、通常の武器で傷つかず、テンプルムによる感情搾取の影響も受けません。また、神帝軍に対抗するための鎧である殲騎(せんき)や、武器である魔皇殻(まおうかく)をその身体に召喚することができます。
 普段は人化の秘術を使っており、一般の人間と変わりありません。しかし、ひとたびその力を解放すると身体のいずれかに魔皇の紋様が浮かび、前記した能力に加え、常人の約10倍の身体能力を発揮します。

●魔皇のパートナー“逢魔”
 逢魔とは、太古の時代から魔皇に従属していた種族で、運命の導きによって、自分が仕えるべき魔皇が必ず一人います。運命の魔皇と逢魔が出会うことで、魔皇の力は覚醒するのです。魔皇と逢魔には“スピリットリンク”と呼ばれる魂の結びつきがあり、この繋がりが強いほど両者の力も強大になるといわれています。
 普段は、魔皇と同じように人化の秘術を使っており、一般の人間と変わりありません。しかし、ひとたびその力を解放すると、種族ごとの特徴が現れ、特殊能力を使用できるようになり、また、常人の約7倍の身体能力を発揮します。

●魔皇の力を方向付ける“魔皇殻”
 魔皇殻とは、魔皇の意志によって瞬時に呼び出せる魔皇の専用武器です。武器、盾、銃器などさまざまなものが存在しますが、魔皇の魔法的な力である“ダークフォース”によって形どられているものであり、工業製品ではありません。魔皇は通常、同時に3つまでの魔皇殻を喚び出すことができます。
 1つの魔皇殻には、魔法的に付与された力の紋様である“刻印”が必ず2つ刻まれています。呼び出した魔皇殻に刻まれた刻印の種類によって、魔皇が使用できるダークフォースの技の種類が変化します。

●魔皇の鎧“殲騎”
 殲騎(せんき)とは、魔皇のための巨大な鎧です。魔皇殻と同じように時空の彼方から瞬時に呼び出すことが可能であり、その風体は、8mほどもある巨大ロボットそのものです。ロボットといってもダークフォースによって形どられているので、たとえ機械的なデザインがあったとしても、機械ではありません。

●世界各地で魔皇捕まる
 神帝軍の公式発表によると、悪魔の生まれ変わりとされる存在“魔皇”が、市民の協力もあって、世界各地で続々と捕らえられました。彼らがいったいどのような存在なのかについては、詳しく発表されていませんが、現在の平和な社会を乱す存在であることに間違いはないようです。